要塞シリーズ（コード1986〜1997）

○中央公論社によるＣ−ＮＯＶＥＬＳと呼ばれる新書版と、後に文庫版が同社の中公文庫から発売されていました。また文庫版には「文庫版のためのあと書き」がおまけ的についております。

○ストーリー紹介は詳しくはおこないません。未読の方々は、ぜひ一度読んでみてください。（中古本屋さん、特に全国展開しているところは結構お手軽な価格で手に入るかもしれません）

●ニセコ要塞１９８６（１〜３巻）

☆特徴
記念すべき第１作目。表現に独特の無機質さが漂い、徹底的に現実感を廃した構造の文章となっている。現在進行中の艦隊シリーズでは、お目にかかれないスタイルである。また各巻の各話の冒頭にガストン・バシュラールのエピグラフがあり、これは作者がイメージを膨らませるために必要だったとのこと。文章スタイルや読後の印象は、管理人自身はこの「ニセコ要塞」が一番の好みです。

☆戦況
北海道島の半分が既にスミノフによって占領されているところから、開始された本編。戦略的には負けながらも、戦術的には勝つという基本がここで確立されています。現用兵器に混じりながらも「サイボーグスペツナズ」や原子力戦車「ウラル」など、ＳＦマインド溢れる新兵器もいくつか登場しました。特に「サイボーグスペツナズ」は化け物です（笑）。雪の中に何十時間も潜み、機銃掃射受けてようやく倒せるというのも…。あんまり目の前には現れて欲しくはありません。

あとラストの「大謀網作戦」、ＩＢＭ海軍との共同作戦ですが、海軍大好きの私が大喜びしたのは、いうまでもありません。戦艦阿蘇とかね。あと２巻でのエピソードですが、スミノフ輸送艦隊を攻撃中に、ニュージャージーが沈みながらも、主砲を撃ち続け巡航ミサイルを発射するシーンも壮絶ですが。

●十和田要塞１９９１（１〜３巻）

☆特徴
新兵器が続々登場するようになり、「ニセコ要塞」よりは、エンターテイメント的要素が強くなっている。しかし、相変わらず劇中での戦線は後退し、前巻の主役（？）ニセコ要塞はあっさり開城したりしますが（苦笑）。

☆戦況
舞台は東北地方。タイトル通り「十和田要塞」を中心とした攻防戦が中心となる。だけど途中で爆発してしまいました（苦笑）。
また同盟関係にあったIBM軍の管理下から離れ、列島軍自前の核融合潜水艦「蒼天」、亜宇宙空母「牙竜」など新兵器が登場し始めます。さらに敵にも「イワン砲」が登場し、これが列島軍を苦しめます。

個人的には「佐渡島の攻防戦」が印象に残っています。さらにラストの「イワン電脳神」を脅迫（！？）するところも結構面白く読めました。「こっちには蒼天があるのだ！」なんてね（笑）。

●阿蘇要塞１９９５（１〜５巻）

☆特徴
本格的に「読者参加」が行われた作品です。いろんな人がいらっしゃいますねー。
これを見ている人の中にも参加された方がいらっしゃるかもしれません。

☆戦況
最も激戦区であった九州島！私、生まれも育ちも九州なので不思議な感覚に陥りました（笑）。仕事で九州自動車道を走ったときや、そこで自衛隊の部隊に遭遇したときなんかはたまりません（笑）。北海道島や東北戦線近くに在住の方の気持ちが良く分かりました。

「日向砲」、「霧島砲」と言ったレールガンや、海中艦隊や亜宇宙艦隊も登場し、完全に「イケイケ」のノリです（笑）。また敵も「ヴェルヌ砲」や「ウランバートル」、「メカロイド」、「ホバークラフト戦艦」などの新兵器や、サイパロイドの透視能力を駆使した作戦などで九州島防衛軍を苦しめます。

また問題が日本一国だけではなくなってきます。東南アジア海域に海中艦隊が向かったり、東シベリア共和国が誕生したりと次の「琵琶湖要塞」につながる部分も見受けられます。ちなみに私の故郷もちょっと登場します。温泉に入るシーンなんですけど。

●琵琶湖要塞１９９７（１〜６巻）

☆特徴
現在も続いている「艦隊シリーズ」のエッセンスが詰まったもの、だと勝手に解釈しています、「影の政府」とか。しかし後半になるにつれて、「ドンパチ！」が少なくなっていきます。今の艦隊シリーズ後半の感じに近い…。

☆戦況
ＩＢＭとの前面対決。スミノフの崩壊。東シベリア共和国との同盟、シワノとの共闘、ボーイング・スペシャルＢ８、海底要塞ノーチラス、地殻変動兵器、気象兵器（クリコン）などスケールの大きい話になっております。アラスカにのりこんでいきますもんね、気象兵器を叩くために。

文章として好きなのは、４巻の第一話「氷島ノバヤ・ゼムリャ」。事態の推移をまるで歴史書のように記しているのが好みです。

また最も私の印象に残っているのは、ラストです。すべてが虚無に向かっていくところ…。

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